シニア世代で賃貸物件を借りる人が増えている?
総務省のデータによると、2020年9月の時点で日本の65歳以上のシニア世代の人口は約3617万人にのぼり、これは総人口の28.7%を占めています。
この大きな割合は、賃貸市場においても無視できない影響を及ぼしています。
60代以上の人々の賃貸物件利用率は増加傾向にあり、これはさまざまな社会的、経済的要因によるものです。
また、2018年の住宅・土地統計調査では、65歳以上の単身世帯で賃貸物件を利用しているのは33.5%と報告されています。
この割合は過去15年間で大きく変わっていませんが、シニア世代の絶対数が増加しているため、賃貸物件を利用するシニア世代の総数は増えているのです。
シニア世代が賃貸物件を選択する主な理由って?
シニア世代が賃貸物件を利用する主なケースは、「自宅を購入しなかった」といった理由のほかに、「子どもの独立によって自宅を売却した」なども挙げられます。
仮にマイホームを購入していても、子どもが独立すれば家が広すぎると感じられるため、売却をして賃貸物件に引越すといった人は多いのです。
また、終活を意識し、相続対策で生前に自宅の売却を済ませておく人も少なからずいます。
シニア世代が賃貸物件を借りられないって本当なの?
日本では、シニア世代の人口割合は増加の一途をたどり、現在では深刻な状況まで来ています。
それに伴い、起きている問題の1つが「シニア世代の住宅確保」です。
この問題に関しては、一般的に抱かれている印象の通り、高齢者は賃貸物件を借りにくいという現状は間違いなくあります。
しかし、借りにくい理由があるように、その理由を解決できれば高齢者でも賃貸住宅を借りることが出来るのです。
では、なぜ高齢者が賃貸物件を借りにくいのか、また、借りるための具体的な方法をご紹介します。
オーナーがシニア世代に賃貸住宅を貸すのをためらう要因は何なの?
賃貸物件を借りる際には、オーナー(貸主)の承諾が必要です。
基本的にオーナーは賃貸物件を借りて収入を得ています。
つまり、オーナーとしては、所有している賃貸物件を貸したいので入居者を募集しています。
しかし、シニア世代が賃貸物件を借りる場合は不安に感じる要因が主に2つある事から、入居を断られるケースが存在します。
1.シニア世代による事故や孤独死の不安
シニア世代は、健康面から部屋の中での事故や、孤独死のリスクを若い世代に比べて背負っています。
例え、入居時には元気だとしても、住み始めてから1年2年で体調が著しく悪くなることも想定されるため、入居を敬遠される傾向があるのです。
特にオーナーが懸念しているのは、「独居老人」と呼ばれるシニア世代の一人暮らしの場合です。
この場合は、万が一の時に発見が遅れやすい傾向にあるため、入居が難しい事が多いのです。
2.金銭面での不安
シニア世代は、健康面だけでなく、金銭面からの不安も入居を敬遠される要因となります。
一般的に年齢を重ね、シニア世代になると、定年退職をし、年金を主な収入源として生活している場合が多いです。
過去の日本では、充分な年金が支払われていましたが、現在の年金では十分な収入が見込みづらく、オーナー側としては不安に思うポイントとなるのです。
また、年金以外の収入や貯蓄、家賃保証会社の利用などで不安の解消ができない場合は入居を断られる要因となることが多い傾向にあります。
シニア世代で賃貸住宅を借りにくいのは具体的にどんな人なの?
それでは、どのような条件の場合、賃貸住宅が借りにくくなってしまうのでしょうか。
一般的に「シニア世代だから」と一括りに入居を断られることはほとんどありませんが、状況によっては難しい場合があります。
しかし、借りにくい理由があるように、その理由を解決できればシニア世代でも賃貸住宅を借りることが可能です。
シニア世代が賃貸住宅を借りる際に気を付けておきたいポイントとは?
では、ここからは、なぜ高齢者が賃貸物件を借りにくいのか、また、借りるための具体的な方法をご紹介します。
まずは賃貸住宅を借りにくい条件に当てはまるかを確認しましょう。
条件付きで入居を受け入れている賃貸物件もありますので、以下の3点に該当するかも踏まえた上で不動産会社に相談しましょう。
1.年金しか収入がない
先ほど解説したオーナーの不安にもある通り、十分な収入が見込めない場合は賃貸物件を借りられない場合があります。
年金暮らしの場合、年金だけでは収入が足りずに預貯金を切り崩して生活をされているシニア世代の方は少なくありません。
ただし、貯金を切り崩しても家賃の支払いが十分できる預貯金があれば問題ありません。
しかし、支払いが滞りそうな貯金額の場合は注意が必要です。
2.保証人がいない
賃貸物件を借りる際には多くの場合連帯保証人を立てる必要があります。
しかし、シニア世代は親族で連帯保証人が見つからないケースも少なくありません。
親族で連帯保証人が立てられない場合は友人や家賃保証会社の利用で審査が通る場合も多いですが、オーナーによっては親族であることを入居の条件にしていることがあります。
やっと見つけた物件が借りられないことがないよう、不動産会社にあらかじめ先ほどの旨を伝えておく事が大切です。
3.一人暮らしで同居人がいない
シニア世代は、入居時に健康でも、突如として体調を崩したり、病気を患ったりする可能性は否定できません。
万が一家の中で倒れたとして、パートナーなど誰かとお住まいになっている場合は早期発見が可能ですが、一人暮らしの場合はそうはいきません。
どうしても、若い世代に比べるとシニア世代の事故死、病死の可能性は高くなってしまうのです。
また、最悪の場合は孤独死となってしまうこともあるため、シニア世代の一人暮らしは定期的に安否が確認できない状態では入居を断られる場合があります。
その他にも、一人暮らしでなくても健康面での不安がある場合も断られる理由になりやすい傾向にあります。
シニア世代でも大丈夫!心強い各種制度と主な仕組みとは?
賃貸物件を利用する高齢者の増加に応じて、国はさまざまな制度を設けています。
ここでは、シニア世代が利用できる各種制度の仕組みについて詳しく見ていきましょう。
1.住宅セーフティネット制度
住宅セーフティネット制度とは高齢者や障がい者、子育て世帯等の住宅の確保に配慮が必要な方(住宅確保要配慮者)に対し、増加している民間の空き家・空き室を活用し、提供する制度で以下の3つの柱から成り立っています。
1.住宅確保要配慮者向け賃貸住宅の登録制度
2.登録住宅の改修や入居者への経済的な支援
3.住宅確保要配慮者に対する居住支援
また、セーフティネット住宅とは、高齢者や子育て世帯、障がいを抱えた人の入居を受け入れて1の登録制度において登録されている賃貸住宅のことです。
日本では空き家が増加していることもあり、空室を効率的に活用しながら、住まいを見つけるのが難しい人へ安価で貸し出す制度が設けられているのです。
セーフティーネット住宅として登録された賃貸物件は、国土交通省が定める耐震性能や居住面積などの基準を満たすように改修されます。
そして、住宅はネットワークで管理され、住まいを見つけるのが難しい人とのマッチングが行われる仕組みです。
主な窓口は都道府県指定の「居住支援法人」と、自治体や関係会社の連携によって成り立つ「居住支援協会」の2つであり、どちらも入居相談や情報適用、入居後の見守りといった手厚いサービスを行っています。
さらに、家賃保証などを代行してくれるところもあるため、審査に不安を抱えている人でも利用が可能です。
2.家賃債務保証サービス
連帯保証人を用意できない場合は、一般財団法人の「高齢者住宅財団」が行っている家賃債務保証サービスを利用することもできます。
60歳以上であれば利用が可能であり、家賃滞納リスクや原状回復費用などの保証を行ってもらえるのです。
保証料はかかってしまうものの、2年間の保証期間で月額家賃の35%と、通常の家賃保証会社とほとんど変わらない金額で利用できます。
ただ、すべての物件で利用できるわけではなく、あらかじめ財団と基本約定を結んだ賃貸住宅に限られる点には注意が必要です。
シニア世代向け物件の見つけ方とは?
ここまでの内容から、シニアの単身世帯に対して躊躇する貸主も少なくありません。
しかし、貸主から高齢者は安定した居住者として考えられる場合も多いです。
例に挙げるとシニア世代は引っ越しなどが少なく安定した家賃収入を貸主が期待できるからです。
このような状況を踏まえ、一部の物件は「シニア相談可」と明示しており、高齢者が比較的借りやすい環境を整えています。
これらの物件では、シニア世代のニーズに理解があるため、審査プロセスがスムーズに進むことが期待できます。
また、大手の不動産会社などは先ほどの表示を行い、時期によっては特集、キャンペーンなどを行っています。
そのため、60代以上の方々が快適に過ごせる物件を事前に選別できるため、このサービスの利用をお考えの方は、ぜひ活用してみてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
60代からの賃貸物件の利用は難しいと思われがちですが、制度等を利用すれば誰でも始める事が出来るので、ぜひ参考にされてくださいね。
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